悲しい夜は、何度だって君に会いに行く
濡れた前髪から滴り落ちた水滴が、はるか遠くの地面へと吸い込まれていく。


わたしはその水滴を追いかけるように、空中へと足を踏み出した。


きっと誰も助けてくれない。


わたしを止める人なんて、誰もいない。


悲しむ人も、きっと。


誰も……──。




「待って!!」


わたしの両足が空気を踏んだ瞬間、大声が聞こえたのと同時に左手が強く引っ張られた。
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