悲しい夜は、何度だって君に会いに行く
屋上に着いた時、ずっと降り続いていた雨は小雨になっていた。


雨の音に混じって聞こえる自分のローファーの音が、少しクリアに聞こえる。


見えるのは黒一色。


まるでわたしの心みたいだ。


「──……」


これからとんでもないことをしようというのにこんなにも無心でいられるなんて。


わたしは自分に驚いていた。


いや、だからこそ無心なのか。


屋上から下を覗きこんでも、恐怖のかけらも感じなかった。
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