最終列車が出るまで
深呼吸をしながら、駅に掛けてある時刻表を見る。よし、間違いない。『上り 快速 十八時三十八分』
この飲み会が決まってから、列車の時刻や乗り換えが検索できるアプリを、ダンナが私のスマホにインストールしてくれた。
以前にもそのアプリを使っていたのだが、夏にスマホを修理に出して戻ってきたら、そのアプリは消えていた。
元々年に一~二回しか使わなかったアプリだから、消えたままにしていた。
飲み会当日の今日まで、アプリで発車時刻を、しつこく何度も確認していた。
それでも小心者の私は、駅で発車時刻が間違いない事がわかって安心した。
列車の発車時刻まで、予定通り五分は余裕がある。
しっかりと自分の行き先を確認しながら、落ち着いて券売機で切符を買った。
時間帯のせいか、仕事終わりを思わせる人達が多い。この駅の周辺には、列車通学が必要な学校はないせいか、学生の姿は見かけない。
早めに改札口を抜けて、ホームで列車の到着を待つ。
昼間はお天気がよくて暖かかったが、日が落ちてしまえば、まだまだ真冬の寒さを感じる。前を留めていなかったコートを握って、ギュッと身体の前で掻き合わせた。
ホームでは、すでに缶ビールを飲み始めている男性がいて、自家用車の移動ばかりの者としては不思議な気持ちになる。
田舎のせいか、公共交通機関の種類も路線も本数も少ない。
私も高校の間は列車通学だったが、高校卒業の折りには自動車運転免許を取得し、自分用の中古の軽自動車を買った。
普通自動車の運転免許を持っている事が、就職の採用条件となっている事も少なくない。
私が住む県では自分の車を持たなければ、行動範囲がかなり制限されてしまう。