最終列車が出るまで


 車の運転が苦手な私としては、必要だから仕方なく車の運転をしているのだ。

 鉄道はJRオンリーの単線。『上り』か『下り』を選ぶだけ。実にわかりやすい(と思うしかない)。

 列車に乗り慣れていない私は、慣れていそうな人達の後ろに並んで、無事列車に乗り込んだ。

 学生、仕事帰りっぽい人、キャリーケースを持った人。車内にはそこそこ乗客はいたが、座席は確保できた。

 座席に座りバッグを膝の上に置いて、ようやく小さく息を吐いた。

 バッグからスマホを取り出し、ダンナにメッセージを送る。

『列車に乗りました。できるだけ早く帰ってあげてください。』

 少し考えて、パンダのキャラクターがペコリと頭を下げているスタンプも送った。

 いつになったら、既読がつくのやら……

 ダンナは私がメッセージを送っても、既読スルーどころか既読にさえもならない時がある。

 最近は文句を言うのも面倒になり、確実に伝えたい用事の時は、迷わず電話をかけるようになった。

 いつも読んでいるweb小説のアプリを開いたが、何となく読む気になれずに、すぐに閉じた。

 スマホをバッグにしまい、小さく溜め息をついた。

 今日、飲み会がある街の最寄り駅には六時五十分に到着する。

 飲み会があるお店は、ネットで検索したら駅前の大通りに面した所にあった。

 歩いて、五分くらいかな。

 七時開始で『女子会プラン 二時間飲み放題付き お一人様四千円』だそうだ。

 開始時間、ギリギリの到着となりそうだ。

「っっ!!」

 そんな事をつらつらと考えていたら、ある重要事項を忘れていた事に気が付いた。



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