最終列車が出るまで


 十時二十二分……走れば間に合うかもしれないが。いやいや、そんなに酔っていないつもりでも、走っちゃダメだよ。予定通り、最終列車で帰ればいい。

 ほろ酔い気分のせいか、最終列車を待つ事にも苦痛は全く感じなかった。

 駅に着いて、一階にあるトイレに入った。そういえば、メッセージがきてたな。

 トイレを出て、改札口がある二階にエスカレーターで上がる。

 中に自販機やテレビも設置してある待合室は、もうすでに照明が消えていた。

 二階に上がって目に付いた一人掛けのイスに、とりあえず腰かける。

 遅い時間のせいか、次の列車が出るまでの狭間の時間になるのか、周囲に人は少ない。

 二~三人がバラバラに、イスやベンチに腰かけている。

 スマホのメッセージを確認すると、ダンナからだった。

『フォレストで、晩ご飯』

 大きな口を開けて、ハンバーグを頬張ろうとする逸美と夏美の写真も添えられていた。

『やっぱり、ハンバーグになったんだ。
飲み会、さっき終わった』

 珍しく、既読がすぐについた。

『ごめん!ご飯がまだ終わってないから、迎えは無理』

『全然大丈夫!最終で帰るから』

 ウサギのキャラクターがペコリと頭を下げているスタンプが送られてきた。

 最終列車で帰ると、ダンナにも伝えていたのだから何の問題もない。はずなのに、ダンナの『無理』のメッセージにちょっとイラッとした。

 フゥ…と息を吐くと、壁際にある自販機に向かった。

 温かい物でも飲んで、少し落ち着こう。

 自販機の前に立ち、並んだ飲み物を睨みながら、しばし悩んだ。



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