最終列車が出るまで


 母さん、不覚!最悪のお休みとしてしまった。

 インフルエンザからの体調不良を、しばらく引きずった。もう、若くないもんね……なんて考えれば、さらに身体も心も重くなる。

 二月に入った頃に、やっと体調が落ち着いてくる。

「よし!おいしく生ビールを飲むぞ!」なんてようやく思えるようになり、心置きなく飲めそうな久々の飲み会を心待ちにしていた。


 飲み会当日は、朝からウキウキだ。

 十日前には雪が降ったのに、昨日・今日は晴れて暖かい。

 住んでいるアパートの部屋は二階で、玄関を出れば海が見える。

 真冬には海から肌を刺すような冷たい北風が吹き付けてくるが、今日の風は穏やかだ。

 柔らかな陽射しに近付く春を感じて、さらにウキウキしてきた。

 私の仕事は、午後一時から四時までの三時間。年末年始の長期休みからのバタバタをまだ回収しきれていなくて、三十分だけ残業をする。

 ダンナ特製のオムライスには卵が足りないかもと心配になり、近くのスーパーに寄って、結局あれやこれやと買い物をしてしまった。

 まぁ、でも、今日は夕ご飯を作って出かけなくてもいいから、時間に余裕はある。

 四人で暮らす二LDKのアパートに帰ってからも、娘達に宿題を急かしたり、洗濯物を片付けたりと休みなく働いた。

 そして、スマホで時間を確認すれば……

「やだ…もうすぐ六時」

 思ったよりも時間が過ぎていた事に気付く。ダンナにも、最後の念押しをしておかなくては。

 自分に予定が入ると、すぐにダンナに報告をする。

 でも、一回話したくらいでは、すぐに忘れられてしまう。だから予定の一週間前くらいから、思い出すたびにダンナに言うようにしている。



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