カレシとお付き合い① 辻本君と紬
私、この人と一緒にいれたら、って思ってしまった。
辻本君と一緒にいたい。
自分がちゃんとしてなくて。
辻本君だから、この瞬間が苦しい。
彼が肩越しに私を見下ろした。
歩みを私に合わせて、横に並んだ。
「荷物は持つし、オレは待つよ?」
と、ちょっと得意げに、ちょっとごまかして言う。
でも彼の言った言葉はズシンと心に重く響いた。
「私、返せないよ⋯⋯ 辻本君に何も⋯⋯ 」
辻本君は、
「待つよ、紬の気持ち」
と珍しく目を合わさずに、前を向いたまま言った。
彼の横顔に夕日があたり、日焼けした肌に影はより濃く陰影をつけて、辻本君の顔の表情が分かりにくい。
心がギュッとする。
辻本君が他の男子と行った後も、ぼんやりして立っていたら、まいちゃんが横に来た。
「辻本、紬が好きなんだね。マジで考えてあげたら?」
とぽつりと言われた。
そうなのかな。
待つよって。
今の辻本君を、私にだけ特別なんだって考えていいのかな。
そうされてるのは、私だけだって、ホントなのかな。
ちくっ、
心の痛みがどんどんひどくなってる
《待つよ、紬の気持ち》
私はそんな資格ないんだよ⋯⋯ 。
確かに辻本君、いつも見てくれていて、すぐ助けに来てくれる。
人に思われるって、こんな事なんだ。
困った時、誰より一番に気がついて助けにきてくれる。
待っているって言われる。
どうしよう私⋯⋯ 。
私はどうしたらいい?