カレシとお付き合い① 辻本君と紬

 理玖が最近、怖いぐらい真剣。
 どうもマジっぽい。
 なぜ彼女は答えないのか、

 彼女さん、大人しくて地味。
 しゃべりにくいっつーか。
 線引かれてるみたいな。
 親しくならない。
 ノリが悪い?テンポが遅い?
 変わってる。

 理玖にも返事しないなんて。

私の耳にも入ってくる、私と辻本君の事。
『あの人ちょっと、変わってる』

 そして最近、辻本君の携帯に誰かからかの連絡がきている。

(あっ、また)

 辻本君が携帯を見る。

「⋯⋯ 」

閉じる。

 なんとなく感じてしまう。女子からだって。
 何で分かるのか、それこそ分からないけど、雰囲気とか表情とかでふっと分かる。

 無言で画面を見たその時の、彼の唇が(あっ)と声にならないぐらい、かすかに動く。
 瞬間の気まずそうな空気。
 困ったようなちょっと甘いような。
 その画面を、誰にも見えないように閉じるその指先。
 閉じた後の目線、ここにいない相手を一瞬でも考えている彼の心がわかる。

 嫌だと思う。
そんな連絡取らないでほしい

 でも、私は言えない。

 間違ったまま、進めない⋯⋯ 。

 好きになる資格さえないまま、誰かも辻本君を想っている。
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