カレシとお付き合い① 辻本君と紬
試した⋯⋯ ?
「こんなやり方、らしくないな、自分でも。馬鹿なことした⋯⋯ 」
と辻本君は眉間に後悔をにじませた。
「待つって言ったのにな。紬の気持ちを見たくなった。オレが告られても平気なのかって⋯⋯ 」
私の気持ちが 見たい⋯⋯ 。
「俺は紬のどんな気持ちも大事にしたい。紬の思うこと、考えてること含めて、丸ごと全部を好きになりたいんだ」
彼の言葉が流れ込んでくる
「紬の心を知りたいからってわざと試すなんて、違う。しかも、他の人を2人の間に入れるようなやり方。紬を傷付けるなんて違う。本当に悪かった」
辻本君は、頭を下げてきた。
私の肩に彼の髪の毛がさわった。
彼のおでこがコツンと私の右肩に押し当たる。
少しだけ私が顔をかたむけたら、彼の髪が私の頬をかすめる。
やっぱり石けんと彼の熱の匂い。
おでこからも、大きな手からも、彼の体温が優しく私にしみこむ。
彼があやまった。
でも、もっと強い気持ちと自信を感じる声で、
「甘やかせてやる。丸ごと全部受け止めてやるから」
と私の肩に髪をつけたまま、強い眼差しで、下から私をまっすぐ見た
彼の心が流れてきて、私の気持ちを強く押してくれる。
間違ったまま、逃げてる自分に。
今、私はちゃんとしないといけない。
「何が紬の心を止めてる? 」
「私⋯⋯ 」
「ずっと見てたから分かる。紬はここにいる。紬の気持ちもここにあるだろ? お前の気持ちの中に『そいつ』はいないし、実際連絡すら取った事ないんじゃないか? 」
「⋯⋯」
「話して欲しい」