カレシとお付き合い① 辻本君と紬
「ばかだな、甘えろよ。甘やかしたいんだよ。そうやって、必死でがんばる紬だから、余計に」
と辻本君が少し辛そうに、眉をひそめた。
「そいつに誠実であろうとするのも、たまらないんだ。そんなことされるような相手か? 紬のそんな気持ちを向けるようなやつなのか? オレなら、言ったことに責任を持つし、紬にそんな思いさせない」
辻本君の言葉が心にしみて、力になる。
間違っていないから、ちゃんと正そうって。
ちゃんと解決しようって。
「俺ならそんな気持ちにさせない。忙しくったって、かっこ悪くたって、自分の事でいっぱいいっぱいでも、少なくともそれを話すし、全く連絡ないのは違う。そんな状態を受け入れる必要なんてないよ。相手がそれは悪いよ」
「うん⋯⋯ ちょっとそうも思ってた。それでも先輩の事を辻本君に相談しているのすら不誠実な気がする⋯⋯ そんな自分が嫌だから⋯⋯ 」
「ちゃんと話してこいよ。きちんとけりつけて。ちゃんと、見てこいよ。ずるいその先輩を。紬自身にも」
「うん、そうなんだ、その通りなんだ」
思わず涙が出た。
辻本君が、そっと背中をなでてくれた。
大きな手で、励ますように、甘やかすように。
後悔が少し流されて、頑張ってけじめをつけよう、と強く思った。
この人に助けてもらって。
背中をおしてもらって。
待ってくれている。
この人の前に立つために強くならなきゃ。
だから、ここからは、自分で自分にけりをつける。