カレシとお付き合い① 辻本君と紬
いつの間になんで、こんな話に?
見たことない森君とやらにも詳しくなって、親友の杏ちゃんも説明して。
話しながらその反応で、辻本君を知る。
明るくて屈託なくて爽やかな感じ。
でも、言われるまま答えてしまうような、さりげない強引さがある。
心地よく主導権を握られるような雰囲気がある。
リーダー気質の男の子ってかんじ。
背も高いし、カリッと細く見えるけど全然女の子と違って、がっしりしてて大きい。
日焼けしてるから、迫力があるし、骨がしっかりしてるのかな。
話してるのに、辻本君の手の骨や、シャツから見える手首や、のどや、おでこの生え際や、耳や、物珍しく見てしまってたら、ニヤリと笑われた。
「話の、内容より、オレが気になる? 」
あ、恥ずかしかった⋯⋯ 見てました。
私は、実は小学校からずっと女子校だった。高校で初めて共学にきた。
だから、かなり上手くいかない。
全然、上手くいかない。
ほとんど『男の子』と話したことがなかったので、普通に応対するのが難しい。
話しかけられたら、どう答えればいいのかすら困って、口調も、敬語なんだか親しそうに話すんだか、迷って結局ぎこちなくなる。
相手が近づいてきたら、上手く距離が取れないのかもしれない。
辻本君はずっと共学だって。
だからこんな風に話せるのかな。
女子だからって、意識して話しませんってしないで仲良くしようとする?
仲良くって厚かましいか。
これがごく普通のコミュニケーションなのかもしれない。
辻本君が話しかけてくれるから、誰よりも知っている人みたいになる。
少し心が痛くなる。
こんな親しさ、どうすればいいんだろう。
辻本君が男の子だから、仲良くなっていいのかと迷いがある。
どこまで仲良くなっていいのか、心配になる。