カレシとお付き合い① 辻本君と紬


「生真面目て、一生懸命で、紬の間違えたことも、それを乗りこえようとするのも、全部が愛しい」
「辻本君⋯⋯ 」
「名前で呼んでよ。お前だけは違うんだ。もっと、根本に帰る場所、自分と同じ場所にいるっていうか自分と一つみたいな⋯⋯ 」

 それはわかる気がした。
 杏ちゃんも、友達も、どんだけ仲のいい親友でも、それぞれ帰る場所がある。
 根本的に違う箱にいて、そこから出てきて仲がいいみたいな。

 でも、辻本君とは、その箱自体が同じになんじゃないかって感じている。
 帰る場所なんだ。

 辻本君が言葉を選びながら話す。

「お互い歩みよってみようっていうんじゃなくて、これからは、一緒に前にすすみたい。紬が誰とも違うって事だけはわかる。ずっと一緒にいる予感しかしないんだ」


 辻本君が腕を伸ばして、そっと私を引き寄せた。
 私より高い体温に、心まで、じわじわとあたたかくなる。 
 広い肩幅と胸、腕のかたくてなめらかな肌が素肌の私の首や手に触ると、彼を感じる。


「お前のしてる事、全部がいちいち、ハマるんだ、いちいち(いと)しいんだ」

 そして、はっきりと彼の気持ちを感じる。私の気持ちも、彼に伝わる。


「それともう一個」


と辻本君が抱きしめたまま、私に耳元でささやいた


「キスしたのお前が初めてだから」


 辻本君の唇が優しく私をふさいだ。

 彼の言葉が耳から、体中、すみずみにまでまわっていく。幸せに満たされる。

 私も初めてだよ。
 私も一緒にいる予感しかないよ⋯⋯ 。

この人と一緒にすすんで行く、ずっと。







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