カレシとお付き合い① 辻本君と紬
♢ オレにだけ甘えてよ



 辻本君はいつでもストレートにはっきりと自分の思ってる事を口にする。

 だからといって、キツかったり勝手なんじゃなくて、配慮もあるし、明るく真正面から、とても気持ちいい態度だと思う。
 実はすごく、あこがれる。

 私は本当は、辻本君にドキドキしている。

 ちゃんと私を見て、強引に引っ張ってくれるだろう彼に、ついて行きたいと思ってる。

 なのに、今の私の状態は、彼に()かれてしまう気持ちを持つことさえ出来ない、
そう自分でしてしまった。

 辻本君といると、自分のダメさに向き合う事になる。
 逃げている自分が浮き彫りになる。

 私はもう気がついてる。とっくに。

 辻本君は違う。

 全然違う。『先輩』と。


 辻本君に任せて前に進むのが、なんかその通りで居心地がいい。
 辻本君に私は助けてもらえるんじゃないのか、彼といれば、なんとかなるんじゃないかと、頼りたくなってしまう。

 そんな自分の弱さも辛いよ。

 辻本君は色んなことを決めてくれる人だ。

「ほら!今、やるよ」

と言ったら、それが良くて、

「やっぱ、やめやめ、こうしよう!」

って、違う事を決められたら、それがいい。
そうだな、としか思えない。

 辻本君は割と「今!すぐ!」って言う。即断即決。
何でもパッと解決させる。
違うと思ったら、

「あー、ごめんごめん」

とカラッと謝る。
 私もそうしなきゃいけないんだと思う。

 もし間違ったら「ごめんなさい」ってちゃんとすればいいんだ。
その時に。
その場で。

 もういいかげん、見ないようにして逃げてないで、正さないといけない。自分が間違ってしまった事を。

 辻本君の側にいたら、あんな人になれるんじゃないのかな、とじわっ苦しくなった。

 クラスで考え事をしながら落ち込んでいた。
マネージャーをはじめて、一週間ぐらいたったころだった。
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