カレシとお付き合い① 辻本君と紬
「どうした?疲れてんの?」
辻本君が声をかけてくれた。
心配してくれてるんだ。
「強引に誘いすぎた? 」
「えっ? 」
「サッカー部、マネージャー」
辻本君は、真剣な顔をしている。
まさか! ってあわてた。
「そんなことないよ! 誘ってくれて、むしろ感謝してるよ! 」
「よかった、元気ないし困ってたらどうしようかと思った」
心配させちゃった⋯⋯ 。
申し訳なく思った。
辻本君に、私が本当によかったんだって伝えたいよ。全部、全部彼のおかげなのに。話すのがうれしくて、話したくて、頼りたくて、あこがれて。
「辻本君はいつも、ちゃんと引っ張ってくれるっていうか、私は本当はマネージャーをやってみたかったけど言えなかったから、本当によかったと思ってる! 」
と必死で言った。
辻本君は、何か、どう言ったらいいのかな⋯⋯。
私にとって初めての、心がざわざわしてしまうような、強くて真っ直ぐで、でもかげりがあって、すごく熱い目で私を見ていた。
空気が薄くなったみたいに、唇が乾く。
彼のその目から、視線が外せなくて、その場に動けないようになって、じーっと見てしまう。
辻本君は、
「オレさ、弟がいるし、どうも勝手に決めることがよくあるみたいだ」
と言った。
「そんな⋯⋯ 」
なんか、声が出しにくかった。
空気が濃いような変な感じだ。
「そ、それを言うなら、私も兄がいて従うのに慣れてるから、そこが欠点かなとは思ってるぐらいで⋯⋯ 」
辻本君がまだじっと見てる⋯⋯ 、
「でも、辻本君の決めてくれる事は、本当に私のしたい事なんだ、だから⋯⋯ 」
彼が、
「だから?」
と低くうながす。
「すごくいいと思う」
「うん、」
と言って、辻本君が少し笑った。
熱い目のまま、ちょっとしょうがないな、って顔。