カレシとお付き合い① 辻本君と紬
なんか、彼にしょうがないな、って思われたらって、心がキュッとする。あきれられたくないのに。
ちゃんと言わなきゃって。
自分が思ってる事も。
断ることも。
ちゃんと。
「そうだな」
と辻本君は言ってから、もっと私に近づいて、低い声で、
「他の人に強引にされても。ちゃんと、断って。オレだけにして」
とすごく真剣に言った。
私は何とか息をしながら、彼だけを見ている。
「ちょっと、考えるだけで、苦しいから。紬が他のヤツに従ったら⋯⋯ 苦しい? 嫉妬か? 」
嫉妬⋯⋯ ?
苦しくなる、辻本君が?
「私⋯⋯ 」
確かに、私ってそーゆーとこあるかも⋯⋯ 、と思った。
その瞬間、またふっと暗い気持ちがよぎって、その暗さに心が覆われる。
だから、あの時、『先輩』を断れなかったのかもしれない、そして、私のそんな欠点を、辻元くんは気づいてる⋯⋯ 。
私は後悔で目をそらす。
真っ直ぐ辻本君を見ることが出来ない。
辻本君から視線を外したら、彼があわてたように言った。
「じゃ、オレたち合うと思うよ。⋯⋯ その、人間関係として⋯⋯ 」
「人間関係⋯⋯? 」
「オレ、決めたり、その守ったり?甘やかしたり?するのが好きみたいなんだ」
「えっ?」
辻本君は付け加えた。
「いや、弟を」
「⋯⋯ うん」
変な意味じゃないっ、てあわてて言い訳するみたいに。
合うと思う、私もそう思う、変な意味じゃなくて。
辻本君に決めてもらって守られたいと思ってる、甘やかされたいと思ってる、
「お互いダメな時、ちゃんと言う? 紬が間違ってると思ったら、オレ言うから。紬もオレが違ってたら言って? ⋯⋯ だから、守らせて欲しい」
「私を⋯⋯ ? 」
「いや、弟みたいに⋯⋯ いや、弟は変か! 」
と照れたように言った。
嬉しかった、そうしたいと思う事を言ってくれる。
「うん。ありがとう、私、頑張りたい」
と小さな声で返事した。
私、いいのかな、辻本君に頼って。
甘えて。
守られて⋯⋯ 。
近くなってる、彼と離れたくないほどに、どんどん、距離が、
どうしよう
どんどん、私⋯⋯ 。