センチメンタルナイト【完】
長年片思いし続けていた彼の口から告げられた言葉によって私の恋に決定的な終止符が打たれたのは、悲しきかな友人の結婚式という実におめでたい席での悲劇となった。
正確には式場からタクシーで十分ほどかかる場所に位置するバーを貸し切って行われた、二次会での出来事だ。


「俺も年内には籍を入れるつもりなんだ」


テーブルを挟んで向かい側に座っていた一星は、グラスを傾けながら確かにそう言ったのだ。
周囲にいた元クラスメイトの連中が「いつの間にそんなに進んでたんだよ!」とか「結婚式楽しみにしてるぜー」とはしゃぐ一方、隣に座る友人の「ていうか彼女いたのね」という突っ込みに同感だと主張する自分がいた。

お酒も入っているしこれは私の聞き間違えか、はたまた酔った勢いで口走ってしまった一星の理想や願望に過ぎないのでは?
そんな粗末な疑念さえ抱いてしまう。
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