センチメンタルナイト【完】
あの時とは受け入れるべき現実の度合が違う。
今度は彼女ではなく、一星に奥さんと呼ぶべき存在ができてしまうのだ。

モタモタしてたらいつかこうなってしまうんじゃないかって不安はあった。
けれど私みたいな女が一星の隣を歩くなんて恐れ多くて、そもそも一星にこの想いを受け入れてもらえる自信がなかった。
だからこんな不甲斐ない結果になってしまった。自業自得と言われればそれまでだ。
積み重なる後悔に、じわりと目の奥が熱を孕む。


「ちょっとトイレいってくるね」


アルコールの回ったみんなが馬鹿騒ぎするなか、ぐっと下唇を噛んで涙を堪えるのが精一杯な私はトイレに逃げる手段に出た。
個室に入った瞬間、脆くなっていた涙腺が限界を迎え、止め処なく溢れ出てくる涙が頬を伝って床に落ちる。

ずっと好きだった。
もう十年も思い続けてきたのに、一星は私ではない誰かとこれからの人生を約束したのだ。
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