秘密のschooldays

約束

「先生、プリント取りに来ました」

昼ごはんを食べ終わってから職員室に行くと、横尾先生が丁度お弁当箱を片付けているところだった。

「おおー、来たか。えーっと、これとこれを持っていってくれ」

渡されたプリントの束は二つ。共和政ローマと帝政ローマについてだった。

「来週の小テストは、このプリントから出すからって皆に言っといてくれ」

このプリント、といわれた紙には、びっしりと重要項目が書き並べてあって、図解も含めるとほとんど隙間なんてない。

「先生、どっちかだけにしましょうよ。これじゃあ、的が絞れないです」

プリントを見た優斗がそう言うと、横尾先生は優斗の頭をものさしで、ぺん、と叩いた。

「ばーか。ヤマ張ってどうすんだよ。全部覚えるために作ったんだから、全部覚えて来い。要点ばっかりだから、今後も役に立つって」

うええー、と優斗が唸る。沙耶も、これだけびっちり書かれてあると、ちょっと辟易する気持ちになってしまう。仕方ない。教師は如何に勉強させるかで、生徒は如何に勉強を避けるかで頭が一杯なのだ。例えば、台風なんかで授業が休みになって嬉しいのは、そういう気持ちがあるからだ。勿論、将来的には、先生方のやっていることの方が正しいと思うけど。

「じゃあ、配っとけよ」

そう言って、横尾先生が、ほら早く行け、と手振りで示した。沙耶と優斗は、プリントを抱えて職員室を出る。二人で並んで廊下を歩いていると、廊下の向こうから見知った顔が歩いてきた。
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