秘密のschooldays
「先生! いつ来たんですか?」
「おう、職員室にホイッスルの音が聞こえたからな。応援してやろうと思って」
職員室に居た、ってことは、今日も先生は仕事をしていたのだろうか。本当に教師って大変だなあと思う。芽衣も崎谷先生を見上げながら、声を掛けていた。
「一緒に見るんだったら、座った方が疲れないですよ」
「良いんだよ、ここで」
先生は立ったまま、芽衣に応えていた。すると、階段を下りてきた人がするりと沙耶の隣に腰を下ろした。
「崎谷が出て行くから、どこに行くのかと思ったら」
「あれ? 横尾先生」
沙耶の隣に座ったのは、横尾先生だった。横尾先生は、座ったまま崎谷先生のことをちらっと見上げて、それから沙耶たちに話しかけてきた。
「なに? 高崎の応援?」
「そうです。優斗くんに誘われた沙耶ちゃんに誘われて」
「高崎も、二年でレギュラー取るなんて、やるなあ」
横尾先生も、グラウンドの方を見つめて、にこにこと言った。どうやら、一緒に応援してくれるらしかった。
「…崎谷先生も、応援されるんでしたら、座った方が楽ですよ?」
横尾先生はちゃんと芝に座ったのに、どうして崎谷先生は立ったままなんだろう。不思議に思って聞いてみると、崎谷先生は、グラウンドから視線を沙耶に戻して、少し口の端を上げてくれた。
「…仕事、残してるからな」
「そーなんですか?」
でも、じゃあ、なんで横尾先生は座っているんだろう。そう思ったけど、その疑問は横尾先生の大きな声に飛ばされてしまった。
「おおっ! 岡本、高崎がまた走った!」
「えっ」