秘密のschooldays
「沙耶こそ、気にすんなって。俺が、見てあげたいんだから」
なにやら、そんな風にはっきりと言われてしまった。ますます親友に対して申し訳ない気持ちになりながらも、連休中に時間を割いてくれた崎谷先生の期待にも応えなければならないから、優斗の申し出をありがたく受け取ることにした。沙耶は、世界史はそんなに酷く心配な成績でもないので、明日の夜に少し復習をすることにして、今日は数学を重点的に復習しよう、と思った。
家に帰ると、食事もそこそこに、沙耶は自室に篭った。連休中に崎谷先生が教えてくれた問題の要点を見返しながら、問題集の問いに一生懸命取り組んだ。優斗だって自分の勉強をしなければいけないんだから、木曜日までに少しでも分かるようになっていないといけない。しかし、一問ずつ答えあわせをしていくけど、どうしても間違ってしまう。どこがどういう風に間違っているのかを自分で探し出すのも、また苦労する。だって、自分ではこれが正解だと思って答えを導き出しているのだから。
『慌てるから、余計にミスが多くなるんだ』
ふと、崎谷先生の言葉を思い出す。
そうだ。補習のとき、時間をかけてゆっくり解いたら、随分出来たはずじゃないか。あの時、崎谷先生には随分ケアレスミスを指摘してもらった。
「よし。もう一度、ゆっくりやってみよう」
ノートを新しいページにして、問題集にもう一度取り組む。小テストのことや、優斗に迷惑をかけるかもしれないことは、少しだけ頭から外した。兎に角一問一問、丁寧に解答すればいいのだ。そう思って、問いに公式を当てはめ、計算式は三度見直した。すると、答えがぴったりと合ってくる。解答と照らし合わせると、なんだか嬉しくなった。
こうやって、落ち着いて解けばいいんだ。崎谷先生も言ってたじゃないか。計算式は、何度も見直せって。
「…うん」
数字ばかりを追っているのは、やっぱりまだ好きになれないけれど、でも、答えを導き出せたときの嬉しさが分かってきた。…こんな風な勉強なら、あまり嫌ではない。迷った先にゴールが見えることの大切さを、沙耶は実感した。