秘密のschooldays
「沙耶」

優斗に呼ばれて、その時沙耶は漸く、教室の、先生の出て行った扉をずっと見ていたことに気がついた。慌てて視線を優斗に向ける。

「あ、なに?」

「今日も図書室、残ってくの?」

「うん。まあ、自分を追い込んでおこうと思って」

「そーなんだ。俺、今日塾だから、一緒には出来ないなあ」

「いいよ、一人で」

優斗がもう鞄を持ってきていたので、沙耶も教科書を纏めて鞄に詰め込む。教室を出て、廊下を一緒に歩いた。

沙耶は昇降口に下りる優斗に付き合って一階まで降りた。靴を履き替えている優斗に、気をつけてね、と声を掛ける。

「うん。沙耶もな」

優斗に応えようとしたとき、廊下の角に、女子の制服を見た気がした。さらりと揺れる、みつあみ。気に留める前に、優斗が口を開いた。

「じゃあ、明日」

「あ、うん。またね」

そうして手を振って別れる。優斗が昇降口の硝子から見えなくなってから、沙耶は図書室へと移動した。窓には曇った空が重たくのしかかっている。このまま、校庭の木々は雨粒の重さに耐え切れなくなってしまうんじゃないかと思うほどだ。

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