秘密のschooldays
恋に溺れる
かくして補習第一日目。沙耶と芽衣は放課後に教室に居残って教科書と問題集とノートを開いていた。先生はひとつ公式を板書する度、ひとつ問題を解く度に、一番前の席に座った沙耶と芽衣のノートを覗きに来てくれる。そして、そこで間違いがあったらすぐに指摘してくれるのだ。
「だから、x軸方向にa、y軸方向にbの点までの角度がαとすると、asinθ+bcosθは…」
ひとつひとつの項目について、ゆっくりと確認するように進めてくれる。授業とは違う、ゆっくりのペースに、沙耶も芽衣も筆記中に頭の中で確認をすることが出来て、時間はかかるけれどいつもより理解が出来た。
夕方のチャイムが鳴る頃には、頭がぱんぱんだった。でも、嫌は気分ではない。やっぱり少しでも理解できていると、脳が疲労していても気持ちが違う。
「わあー、勉強したー」
崎谷先生が、じゃあ今日はおしまい、と言うと、芽衣は机に突っ伏した。気持ちは凄く分かる。
「でも、授業よりは分かっただろ」
「うん、それはありがたいです。なんていうのかなあ、授業中だとこんなにいちいち確認してやらないから、やっぱついていけないこと、あるもん…」
芽衣の意見に同意する。
「そうよね。計算とか、こんなに見直してる暇ないし…」
「グラフ描いたり?」
「はい」
そりゃ良かった、と崎谷先生が笑った。先生が笑ってくれると、なんとなく沙耶もほっとする。その横で、芽衣がごそごそと机の上のものを鞄に仕舞い始めていたので、沙耶も慌てて教科書などを片付けようとすると、芽衣がいいよいいよ、と止めてくれる。
「…芽衣ちゃん?」
「私、先に帰るからさー。もーちょっとゆっくりしてったら?」
芽衣の言葉に、え、と思う。だってそれはちょっと……。