秘密のschooldays



白い明かりの中で、二人で居た。先生は沙耶の隣の席に横向きに座って足を組んでいる。沙耶は席に座ったまま、ぼんやりと机の上を見つめていた。

「……先生は、どこまで、何を、知ってらっしゃったんですか……?」

優斗は芽衣に連れられて帰っていった。すぐには無理だけど、いつか喜んであげられるようになるよ、と沙耶に言い残して教室を出て行った背中を、沙耶は胸に痛みを感じながら見つめていた。

…優斗が、自分のことを好きだったなんて知らなかった…。

「……まあ、優斗の言ったことも間違ってないとこがあるなあ。…お前さあ、本当に気付くの遅いんだって。あれだけお前のこと構ってた男が、純粋に友情だとか思ってることの方が、俺には信じられん」

崎谷先生は、沙耶の答案を見て、ケアレスミスが多い、と言っていた。…本当に、注意が足りないんだなと思う。

「…今は吹っ切れた気持ちになってたかも知れんけど、…まあ、付き合ってる彼女も居るわけだし…、でもまあ俺が見たところ、入学してきた時からお前のこと、好きだったとは思うよ」

多分、優斗は、それでも幼馴染の沙耶のことを大事に想いすぎて、自らの気持ちに封をし、見ない振りをするうちに、本当に友情だと思えるようになったのだろう。…でも、それ故に、大人の先生が沙耶のことを攫うのは我慢ならなかったのだろう、と先生は言った。

「……全然、気付かなかった……。…優斗に、悪いことしちゃった……」

どんな気持ちで、自分の傍に居てくれたのだろう。でも、例え告白されていたとしても、今、先生に向かって溢れているような気持ちがそのときに芽生えたかと問われたら、答えられない……。

「…でも、……でも、私は、先生が好きです……。…それ以外、考えられない……」

沙耶の告白に、先生はそっと席を立って沙耶のことをきつく抱き締めてくれた。

「それでいい。それ以外は考えるな。俺は大人だから、沙耶が大人になるまではちゃんと庇ってやる。…その代わり、ちゃんと覚悟して俺の傍に居ろ。俺は、お前の気持ちも時間も、全部もらうぞ」

力強い腕と胸板に囲われて、その言葉に目が潤みそうになる。先生の言葉を信じていれば、大丈夫。きっと、先生と一緒に歩んでいく時間は、沙耶を幸福にしてくれるだろう。そのときに、親友にもあたたかく見守ってもらえるといい、と沙耶は心の中で願った。





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