余命38日、きみに明日をあげる。
「そんな薄着で寒くないの?」
琉生がいぶかし気に私を見る。
「中にセーター着てるから大丈夫だよ」
「見た目が寒そうなんだよ。ほっそいし。そんなんじゃ、熱たくわえらんないだろ」
そう言う琉生の方が寒そうだけどな。
琉生はおもむろに自分のマフラーを外すと、私の首にくるっと巻いた。
「えっ、琉生が寒くなっちゃうよ!」
「いーの」
外そうとすると、優しく静止された。
「……ありがと。今日は早く帰れるから、そんなに防寒してこなくてもいいかなって」
本当はすごくうれしい。首を下げて口元にマフラーを当てた。あったかい。琉生のにおいがする。
「帰りより朝の方が寒かったりするんだよ。油断するなって」
「はあい」
やっぱり琉生は過保護だ。
──チリリリン。
後ろから自転車のベルが鳴って、私はあわてて横にずれた。
その左側、私のぎりぎり横を猛スピードで通過する自転車。