余命38日、きみに明日をあげる。
前向きな歩美ちゃんがキラキラして見えた。
「うん、がんばって」
嘘じゃなくて。
歩美ちゃんが告白するということは、私が願っている琉生の幸せに一歩近づくから。
歩美ちゃんだったら、いいと思う。
まっすぐに、琉生を好きでいてくれている歩美ちゃんなら……。
家庭科室の窓からは、グラウンドがよく見える。
思い思いに体を動かす人、響くホイッスル、飛び交う掛け声。
どこをみても青春だ。
教室の中は、陽で温められて暑いくらいだった。
空を見上げれば、雲は動いているのかいないのかわからないくらいのんびりと浮かんでいる。きっと風も穏やかなんだろう。
視線をグラウンドに戻すと、私の目はある一点に釘付けになった。
パス練習をしている琉生がいたのだ。
こうやって部活をしている姿を見れるのは、月に二回。同好会があるときだけ。
でも、ずっと外ばかり見ているわけにもいかないので、すごく貴重。
いい顔してるなぁ。
「莉緒ちゃん、何見てるの?」
慌てて視線を家庭科室内に戻す。
声をかけてきたのはピンクの三角巾とエプロンを付けた歩美ちゃんで、ボウルを抱え、手際よく泡立て気を動かしていた。そして角を確認して、「うん、おっけー」とつぶやく。