余命38日、きみに明日をあげる。

琉生を見ていたなんて言えない。琉生を思って、琉生のためにお菓子を作っている歩美ちゃんに。

「ん? おいしそうな雲だなーと思って、へへっ」
 
咄嗟に空を指させば、思った通り不思議そうな顔を見せる歩美ちゃん。

「なにそれー」

「ほらあの雲、大きな綿菓子みたいじゃない?」

「やだー莉緒ちゃんてば、結構子供っぽいこと言うんだね」

歩美ちゃんはふふっと笑って、ボウルを抱えたまま作業に戻った。
 
あぶないあぶない。

思考を切り替えて、自分の作業に戻った。


やがて、いい匂いが家庭科室に充満してきた。

お菓子を食べたり、お菓子作りを眺めるのは好きだけれど、実のところ作るのは得意じゃない私。

結局私は、マフィンを作るグループに入った。

大切な人へのお菓子──私の場合は、両親へ。
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