余命38日、きみに明日をあげる。
「大事なのは気持ちだよ! 味じゃないって……あ、ごめん、そういう意味じゃないよっ!?」
私ってば、なにを言ってるんだろう。
勇気づけたつもりが、墓穴を掘った気がする。でも、絶対に美味しいに決まっている。
なにより、想いがこもっているんだから。世界にたったひとつの、歩美ちゃんにしか作れないお菓子。
「ふふふっ、ありがとう」
柔らかくふわっと笑う彼女に、完全に負けた、と思った。
負けるも何も、初めから競うつもりなんて毛頭ないけれど。
むしろ、歩美ちゃんの恋がうまくいけばいいと思う。
どうか、琉生を幸せにしてください──。
「お願い!」
両手を合わせて目の前で拝む歩美ちゃんに、私は戸惑っていた。
同好会のみんなは、出来立てのお菓子を手に嬉しそうに家庭科室を後にして。
最後に出た私と歩美ちゃんも、一緒に昇降口に向かったんだけれど。