余命38日、きみに明日をあげる。
焦って莉緒の方を見る。
莉緒は水野と話していて、俺らの話には全然気づいてない。よかった。
それでも「声がでかいんだよ」と、陸乃進を小突くと。
「でもさ、なんでお前たちつき合わないわけ?」
また野暮なことを聞いてくる。
「なんでって……。俺と莉緒は……そんなんじゃないし」
つき合えるものならとっくにつき合っている。
莉緒は俺のこと、過保護な兄貴ぐらいにしか思ってないはずだ。
恋愛感情なんて、莉緒はこれっぽちも抱いてないに決まってる。
俺が莉緒に依存しているだけだ。守るなんていう名目で、莉緒のそばに居たいだ
け。
「いや、誰が見たってお似合いのカップルだろ。お前だってまんざらでもないんだろ?」
こういう話を他人からされるのは苦手だ。
今さらだと笑われるかもしれないが、体が燃えるように熱くなり、ブレザーを脱ぎ、椅子の背にかけた。
『誰がハタチまで生きられない人なんて彼女にするっていうの』
莉緒の言葉を思い出すと、今でも胸がえぐられそうになる。
その横顔が、とても悲しそうだった。