余命38日、きみに明日をあげる。
「こんなに一緒に居たのに、莉緒のことがわからないなんて」
悔しかった。
莉緒のことならなんでも知っているつもりでいた。知っていたかった。
「もっと、シンプルに考えればいいんじゃないのか」
そよぐ風が、トーヤの黒髪をコートをたなびかせる。
「シンプルって……」
「倉木莉緒をずっと見てきたお前なら、わかるはずだ」
俺は、半分隠されたトーヤの顔をじっと見つめた。
「なあトーヤ。本当は知ってるんだろ。そうだろ」
死の神にわからないことなんてないはずだ。
そもそも、3つの願いがあることを知っていること自体、おかしい。
「さあ」
はぐらかされているのか、本気でわからないのか、推察できない。
目が見えないと、こうも心理がわからないものか。
「倉木莉緒と気まずくなってる場合じゃないだろう。今、この瞬間にも、時間は進んでいる。倉木莉緒の寿命に向かって」