余命38日、きみに明日をあげる。
唇をかみしめ、涙をこらえる一花。
いつも凛とした一花の顔が、見たこともない歪んでいる。
こうなるのが分かっていた。だから言いたくなかった。でも、一花だから言ったんだ。
「うそって言ってよぉ……」
私の手をぎゅっとつかむ一花。
……うそだったらいいのにね。
そう思いながら、そうではない現実に、私は優しく握り返した。
話の終了を告げるように、響くチャイム。
涙をこらえるように天を仰げば、規則正しく描いたような筋状の雲が、私たちを静かに見下ろしていた。