余命38日、きみに明日をあげる。
松田さんが病室を出ていくと、私は窓の外に目を向けた。
前回病室から見えた外の景色は、爽やかな青空に、新緑が広がっていた。
今は、すこし濁ったような青色の空。イチョウの葉は黄色くなって半分ほど落葉している。
「あ、鳥」
二羽の鳥が、身を寄せ合いながら枝にとまっていた。
お話しているのかな。夫婦かな。
一羽がバタバタと羽をばたつかせて飛び立つと、追いかけるようにもう一羽も飛び立った。
揺れた枝から、黄色い葉っぱが一枚ひらひらと舞い落ちる。
それが命のかけらのように見えた。
私の命も、いつ朽ち果ててしまうかわからない。
何かの拍子で、ああやって落ちてしまうのだろうか。
いつもは季節の移ろいなど気にしないのに、病院にいるときは、やけに目に付く。
そして、それが無性に怖く感じるのだ。確実に時が過ぎていることをまざまざと見せつけられているようで。
いっそのこと、このまま時が止まってしまえばいいのに……。
私は自分の体をぎゅっと抱きしめた。