余命38日、きみに明日をあげる。
「よお」
「えっ……」
昨日に続き、少しびっくりしたような顔を見せた莉緒だが、俺は構わず中へ入った。
するとその顔が緩み、鼻をひくひくさせる。原因は、俺の持っている紙袋だ。
どうやら、出来立てのマドレーヌが自己主張しているらしい。
6畳ほどのこの部屋は、あっという間にマドレーヌの香りに包まれていた。
「これ」
心臓がバクバク言ってる。
お菓子ひとつ渡すだけで、こんなに緊張するなんて。
「う、うん……」
おずおずと、マドレーヌの入った紙袋を差し出すと。
「おばさん、から……?」
「いや……」
「え?」
「……俺が作ったんだ」
「……っ」
莉緒が息をのむ。
『琉生の作ったお菓子が食べたいなぁ』
この間、莉緒がポツリとこぼした言葉が、俺の中にずっと住み着いていたんだ。