余命38日、きみに明日をあげる。
まさか、莉緒の願いが「俺のお菓子を食べたい」わけがない。
それとは別に、仲直りできる方法。莉緒を笑顔に出来ること。
昼間トーヤに言われた『シンプルに考えろ』この言葉がヒントになって、シンプルに考えた結果、お菓子作りしか浮かばなかったんだ。
「……琉生、が……?」
莉緒が、かみしめるように言った。
「ああ」
緊張する。ダサいくらいに緊張している自分がいる。喉なんてカラカラだ。
さっき食べたマドレーヌが、口の中の水分を全部奪いやがった。
莉緒は、紙袋を両手で握りしめたままうつむいている。
……どうした?
呼吸をするのさえもためらってしまうような静けさが部屋を包み、何か発しよう
とゆっくり唇を開いたとき。
「……っ……っ」
聞こえてきたのはすすり泣く声。
……莉緒が、泣いていた。
ピンク色の絨毯の上に、グレーのしみが出来る。