余命38日、きみに明日をあげる。
「おいっ、どうしたんだよっ!」
俺は慌てた。
だってそうだろ。笑顔にするために作ったお菓子で泣かれるなんて予想外もいいところだ。何が起きたのかとパニックになる。
「ごめっ……うれしくて……」
片手を目元に当てて肩を震わせる姿に、俺は伸ばした手が宙で止まった。
嬉しくて泣いてる?
その原因に、今度は俺が困惑する。
「ごめんっ、食べていい?」
「も、もちろん」
莉緒は大事そうにひとつ取り出すと、小さい口でひとくちかじった。
目を瞑り、味わうようにゆっくり口を動かす。
ゴクリ、それが莉緒の喉元を通ったあと。
「琉生、美味しいよ。すっごく美味しい」
泣き顔で笑いながら伝えられた感想は、俺の心にまっすぐ届いた。
かざりっけのないストレートな言葉。
でも、どんな言葉よりも嬉しかった。