余命38日、きみに明日をあげる。
莉緒から聞けた「美味しい」

昔の思い出が一気によみがえる。

『琉生の作ったお菓子、美味しい!』

まだ幼顔でそう言って笑っていた莉緒と重なった。

それから、黙ったままかみしめるように一つを食べ終えると、莉緒はゆっくり口を
開いた。

「私ね、ずっと琉生のお菓子が食べたかったんだ。でも、それを言ったらプレッシャーになるんじゃないかと思って言えなかった。琉生とおじさん……ここ数年ぎくしゃくしてるし、琉生もお店に行ってないのを知ってたし」

莉緒がそんなことを思っていたなんて、知らなかった。

莉緒の目元できらきら光る涙の粒。

泣き顔で笑う莉緒が、すごくキレイだった。

「ごめんね、歩美ちゃんのこと。私、自分の考えばっかり押し付けちゃったよね」

「いいよ、そのことは」

「琉生、私にばっかり構ってくれて、女の子と遊んだりしないから、それはそれで私も心配っていうか。悪いなって思ってて」
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