余命38日、きみに明日をあげる。
今日はいつもより早く出たつもりだったのに、やっぱり琉生は先に居た。
「よく眠れた?」
「うん。眠れたよ。目覚めもよかったし」
私たちの間に、昨日みたいな変な空気も距離感もない。それが嬉しい。
「ならよかった」
半分は嘘。
目覚めはよかったけど、琉生が突然お菓子を作るから、興奮してなかなか眠れなかった。
何度も寝返りを打って、最後に時計を見たのは1時半だった。
でも、眠りの質がよかったんだろう。
「琉生は? 眠れた?」
琉生も、久々のお菓子作りで興奮して眠れてなかったりして……。
「おかげさまでぐっすり」
……なわけないか。
でも、爽やかな笑顔の琉生が見れただけで私は幸せ。
bonheurの箱すら見るのを嫌がっていた琉生が、お父さんに初めて教わったマドレーヌを作った。それだけでも大進歩だと思う。
私と仲直りをするために、思いついたのがマドレーヌを作ること。
琉生らしい。