余命38日、きみに明日をあげる。
そもそも、トーヤはなんのために来たんだ。
願いがわからなければ意味ないじゃないか。役に立たない死神め。
しばらくすると風が止み、あの独特な気配が俺の周りを漂った。
トーヤが現れる合図だ。
「……っ!」
振り返ると、いつものようにフードを目深にかぶりたたずむトーヤの姿があった。
独特なオーラに包まれたその体はどこか異様で、やっぱりこの世のものではないと再認識させられる。
俺はトーヤのところまで大股で歩みよると、胸ぐらに手を伸ばした。
トーヤの強さは知っている。本気を出したら俺なんかひとたまりもないのは百も承知。
「もうなんだっていいから莉緒の願いを叶えてやれよっ!」
だが、今はそんなの忘れるくらい無我夢中だった。
「本当は莉緒の願いを知ってんだろっ!!!」
白い吐息が、俺とトーヤの間をすり抜けていく。
必死な俺の前で、やっぱり今日もトーヤはポーカーフェイスを崩さない。