余命38日、きみに明日をあげる。

再び風が強く吹いた。

冷たい空気が頬をさらい、現実が戻ってくる。

「あわわわっ、先輩ったらもうっ……!」

その間で、俺とトーヤを交互に見ながらあたふたするナオ。

気付かなかったが、ナオもいたらしい。

「琉生さんっ、落ち着いてください! 一緒に考えましょう? 莉緒さんの願い!」

トーヤのことはあきらめ、必死に俺をとりなしてくる。

「っていっても、私じゃ役にたたないか……」

ナオを見ていると、トーヤの態度に腹が立って仕方ない。

どうしてあんなにえらそうなんだ? ナオみたいならよかったのに。

あんな奴が莉緒の担当だなんて残念でしかない。

魂を運んでくれる"ありがたい存在"なんて思えるわけがない。

「やだっ、先輩手帳忘れてるじゃん!」

ナオの声先に目を向ければ。

ベンチの上。黒い手帳が確かにそこには置き去りになっていた。

莉緒の名前が書いてある、死の神リスト……。
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