余命38日、きみに明日をあげる。

かっこつけるように去って行ったくせに、忘れていくとは。

「死の神にとって、なによりも大事な手帳をっ……!」

慌てたようにナオがそこへ走って行く。

あの手帳に名前が載っていなければ、莉緒が死ぬこともない。

どうにかして、莉緒の名前を消す方法はないんだろうか。

……そう思ってひとり首を振る。

もしあったとしても、俺にそんなことができるわけない。

そうだ。破ってしまえばいい……?

するとそのとき強風が吹き、手帳が風に煽られ飛ばされた。

パラパラとページをめくりながら、踊るように遠ざかっていく手帳。

「わあっ、待ってー!」

ナオが必死に追いかけ、開かれたままの手帳をなんとかつかむ。

ほっとしたように拾い上げたナオが、砂を払った次の瞬間──固まった。

開かれたページに落としたナオの目線が、一点にくぎ付けになり動かなくなったのだ。
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