余命38日、きみに明日をあげる。
いつも百面相をしているナオがとても真剣な目で。
かすかに手も震えている。
「……どうした?」
問いかけると、ハッと我に返ったような顔をしたナオは、「で、では失礼しますっ」と言って、手帳を大事そうに抱え、トーヤと同じように闇に消えていった。
「うわっ!」
慌てていたからか、つんのめって転びそうになるというお約束も忘れずに。
「ふっ」
思わず笑いが漏れた。ナオを見ていると、やっぱり和む。
それにしても、今のナオの顔……どうしたんだ?
俺は首をかしげながら、ナオとは反対方向に歩いて行った。
もう時間がない。
莉緒の願いだと思うことは、なりふり構わず行動に移していくしかない。
こうなったらもう……賭けに出るしかない。
家に帰る道すがら、俺は一つの決意を固めていた。
見上げた空には、ふたご座流星群が流れていた。