余命38日、きみに明日をあげる。
「莉緒が言ったんだ。椎名とつき合えって……それが莉緒の願いなら、俺はそれを叶えるしかないんだ」
「……佐久間? あんた大丈夫? 騙されてない? へんな宗教にでも入ってるんじゃないんでしょうね」
怒りから一変。
若干引き気味に尋ねる水野の目をしっかり見て、俺は首を振った。
「ちがう、そうじゃない。莉緒は死の神のリストに載っていて、あと13日後に死……」
「しっかりしなさいよっ!」
頬に強い痛みが走った。寒さに加え、ひび割れるような痛みが。
そっと手を当てると、ジンジン熱くなってくる。
どうやら俺は頬を叩かれたみたいだ。
「お願いだから……しっかりしてよ」
水野の声は震えていた。
「じゃなきゃ、私だってどうしていいかわかんないっ」
そう言って、再び顔を覆い泣き出す水野を前に、俺はそれ以上は口をつぐんだ。
俺と違い、つい最近莉緒の命の期限を知らされた水野は、気持ちの整理がつかないんだろう。
俺だって、いまだに受け入れることができないのだから。