余命38日、きみに明日をあげる。
死の神さん
「こんばんは」
午後6時過ぎ。
ドア近くの人にそう声をかけながら病室に入ってきたのは。
──琉生だ。
琉生が来てくれた。それだけで胸が弾む。
昨日いた個室から大部屋にうつった私は、読んでいた本を閉じ、窓ガラスに映る自分の姿を確認する。
髪、おかしくないかな。
軽く髪を押さえ、ベッドの上でドキドキしながら琉生が現れるのを待った。
「よお。具合どう?」
半分開いたカーテンからひょっこり顔を出した琉生の鼻の頭は、ほんのり赤かった。
それほど外は寒いんだろう。
コートも着ないで相変わらずマフラーだけの琉生。
「お帰り。うん、調子はいいよ」
琉生は「そっか」とホッとしたように言うと、慣れた手つきでパイプを引っ張ってきて座った。
「昨日は、取り乱しちゃってごめんね」
自分の言動はすべて覚えているけど、いくら気心の知れた琉生でもさすがに恥ずかしい。