余命38日、きみに明日をあげる。
人は誰でも、命が終わりに近づくと、死の神が迎えに来るらしい。
「えっ……」
琉生は持っていたコーヒーを落とした。床でペットボトルがぐにゃりとつぶれる音がした。
「えっ、ちょっと大丈夫!?」
幸いキャップをしめていたからこぼれなかったけれど、わかりやすすぎる動揺に、私のほうが驚いてしまった。
やっぱり、おかしいよね。
死の神、だなんて、そんな非現実的なこと。
でもね。私は信じてる。
「ご、ごめん……それで……死の神? それがどうしたの?」
琉生はコーヒーをしっかり握りなおすと、笑うこともなく、真剣な目でたずねた。
驚いていた割には、ちゃんと話を聞いてくれるらしい。
それなら、と私も初めてこの話を口にした。
「あのね……アキちゃんがなくなる1ヵ月くらい前に、私すごいことを聞いたの。アキちゃんの前に、死の神と名乗る男の人が現れたんだって」
そして、こう言ったらしい。
「あと1ヵ月後に、アキちゃんの魂をいただきますって」