余命38日、きみに明日をあげる。
少し白髪やシワも増えた気がする。それは、俺がかけた気苦労のせいなのかもしれない。
そう思ったら、込み上げるのは罪悪感ばかり。
俺は逃げていただけだった。
目の前の問題から逃げて、自分の気持ちさえ、見ないようにして。
でも、いつまでも逃げ続けるわけにいかないと思ったんだ。
この間、マドレーヌを作ったことが、ずっと目を背けてきたことの殻を破る一つのきかっけだったことは確かだ。
莉緒は限られた命の中で、毎日を懸命に生きている。
なのに俺は繰り返し訪れる日常に甘えて、問題を先延ばししているだけ。
こんな俺を莉緒はどう思っているだろう。
莉緒に誇れる自分でいたい。俺だって動かなきゃいけない、そう思わされたんだ。
「でも……将来はパティシエになりたい」
俺は自分の意思をハッキリ告げた。
「琉生……」
父さんは弾かれたようにまばたきをすると、大きく目を見開いた。