余命38日、きみに明日をあげる。
久しぶりにお菓子を作っているとき、本当に幸せだった。
それを食べてくれた莉緒の笑顔や、母さんの言葉。やっぱり俺が満たされるのは、俺の作ったお菓子を喜んで食べてもらうことだと強く思ったんだ。
医者を目指そうと思った気持ちに嘘はない。
けれど一度きりの人生、自分の心に素直になれば。
「俺はやっぱり、お菓子作りが好きなんだ」
莉緒の病気を治したいという夢や思いがなくなったわけではない。
ただ、俺は俺の出来ることをするべきだと思った。
俺の作ったお菓子を食べて、涙を流して喜んでくれた莉緒を見て、俺の存在意義を考えさせられたんだ。
死ぬまでに叶えたいことのひとつになるくらい、待ち望んでいてくれた人がいる。
俺のお菓子で、誰かを笑顔にする。そういう道を俺は行きたい。
「でも、俺には知らないことがまだまだ多すぎる。世の中のこと、経済のこと、それから莉緒みたいに病気と闘っている人たちのことなど、まだまだ知りたいこと、学びたいことはたくさんある」
俺はまだ未熟すぎる。