余命38日、きみに明日をあげる。
「俺、何かしたか……?」
じっとトーヤの顔を見つめる。
フードで隠れたその表情は読み取れない。
今日一日のことを振り返る。
普通に学校へ行き、帰りに莉緒の病室へ寄った。
そこでアキちゃんの話を聞き、家に帰って父さんと向き合った。
パティシエになりたいとはっきり自覚し、それを父さんに告げた。
今日のハイライトは、数年に及ぶ父さんとの冷戦に幕を下ろしたことだ。
「……え?」
まさか。
もう一度トーヤの顔を見る
「うそだろ……」
莉緒の願いは、俺がパティシエの道を選び、父さんと和解すること……?
「そうなのか……?」
トーヤは表情を変えずうなずきもしなった。
しかし、無言ほど肯定の威力が強いものはない。
「文字が薄くなっているのがその証明だ」