余命38日、きみに明日をあげる。

「俺、何かしたか……?」

じっとトーヤの顔を見つめる。

フードで隠れたその表情は読み取れない。

今日一日のことを振り返る。

普通に学校へ行き、帰りに莉緒の病室へ寄った。

そこでアキちゃんの話を聞き、家に帰って父さんと向き合った。

パティシエになりたいとはっきり自覚し、それを父さんに告げた。

今日のハイライトは、数年に及ぶ父さんとの冷戦に幕を下ろしたことだ。

「……え?」

まさか。

もう一度トーヤの顔を見る

「うそだろ……」

莉緒の願いは、俺がパティシエの道を選び、父さんと和解すること……?

「そうなのか……?」

トーヤは表情を変えずうなずきもしなった。

しかし、無言ほど肯定の威力が強いものはない。

「文字が薄くなっているのがその証明だ」
< 224 / 288 >

この作品をシェア

pagetop