余命38日、きみに明日をあげる。
莉緒が、俺と父さんの関係を見ては寂しそうにしていたのには気づいていた。
だからと言って、親子関係に口は出してこなかった。
けれど、
「嘘だろ……」
そんなことを、莉緒が死ぬまでに叶えたいと思うほど、願っていたんなんて。
待てよ。
これじゃあ、俺が叶えてやるというより、俺が行動に移さないと叶わない願いだったじゃないか。
「……知ってたんだろ」
トーヤは初めから知っていたんだ。
もし、願いを最初から聞いていたら──?
俺は素直に従えていただろうか。
答えはノーだ。
莉緒のために菓子を作ったのも、父さんに自分の想いを告げたのも、然るべきタイミングと重なったからだ。
「じゃあ3つ目も……」
俺に関することなのだろうか。俺が行動を起こせば、莉緒の願いにつながるのか……?
すがるように、トーヤを見つめると。
「自然の流れに任せろ」
口しか見えないトーヤが放つ言葉は、やけに説得力があるように感じた。