余命38日、きみに明日をあげる。
どういう意味なのだろう。
「琉生の思うままに任せれば、大丈夫だ」
今まで、トーヤの言葉に間違いはなかった。
きっと、そういう場面が訪れて、何かの選択を迫られるのかもしれない。
聞いてしまったら、運命が狂うかもしれない。
俺は追及することなく素直にうなずいた。
──と、ここで初めてナオがいたことに気づいた。
いつもならトーヤより存在感があるナオに気づかなったのは、あまりにも衝撃的すぎたからなのか、それとも……。
まるで、昨日の別れ際と大して変わっていない。
どことなく何か落ち着かない様子で、トーヤに対して何か言いたそうな目をチラチラ向けている。
ふたつ目の願いが叶ったんだ。
いつもならば『良かったですね!』と、俺の手を取り、誰よりも興奮しそうなのに。
喜んでいるようには到底見えない。
結局その日、ナオは一言も言葉を発しなかった。
昨日の別れ際に感じた違和感は、そのままだった。