余命38日、きみに明日をあげる。
盛大な溜息を吐きだすと、それが気に入らなかったのか、今度こそ調査票を丸めて俺の頭に落とした。
「いって!」
「痛いわけがあるか!」
俺は大げさに痛がるが、川崎は相手にせず「放課後までにはちゃんとしたものを出せよ」と教卓へ向かった。
そして、「おーい、ホームルーム始めるぞー」とクラスメイトに呼びかける。
騒々しかった教室内が、一気にボリュームを絞ったように静かになった。
進路……か。
事務的に進むホームルームを聞き流しながら、俺はぼんやり窓の外を眺めた。
父さんには、bonheurを継いでほしいと言われている。
俺も、将来はパティシエになるものだと当然のように思っていた。
小さいころから父さんが菓子を作っている姿を見てきた俺にとって、それは自然なことで、高校卒業後は調理学校に進み、専門的なことを学ぶつもりでいた。
しかし、俺の考えは次第に変わり始めた。