余命38日、きみに明日をあげる。
「なあ」
俺はトーヤに騙されていただけだったのか?
つかみどころのない、胡散臭いやつだとは思っていたが、本当にただそれだけの男だったのか?
「……ちが、うん、です……っ」
切れ切れの、悲痛な声が聞こえた。
……ナオ?
今にも泣き出しそうなその顔に、揺さぶって口を割らせようとしていた手を引っ込める。
俺は自分を落ち着かせるように、深呼吸した。
「なにを聞いても驚かないよ。知ってることがあったら全部教えてほしい」
ナオを追い込んでも仕方ない。
できるだけ、話やすいように声音もやわらげて。
しばらく口をつぐんでいたナオは、すがるような瞳を向け、ようやく口を開いた。
「言うか言わないかどうしようか迷ってました……でも……」
「いいよ、言って」
やさしくナオの背中を押す。
「……あのリストには、倉木莉緒さんの名前はありませんでした」
「……どういうことだ?」